三ヶ月目
あの日私はNHKを見ていた。
ゆらゆらと揺れ始めたが、大した事は無いだろうと思っていた。
揺れはいつまでも終わらないばかりか、だんだん大きくなってくる。
食器棚で音が出始めて、犬も驚いてうろつく。まだとまらない。
「どこかで大変なことが起こっているぞ」
直感的にそう思った。
ゆれが収まった後、テレビが緊急放送に変わる。
東北地方で大地震が起きたと。
ヘリコプターの映像だろう。どこかの海岸線を映している。
次の瞬間、海が陸を襲った。
道路には何事も無かったかのように車が走っている。
「逃げろ、津波だ!!気づいてくれ」
意味が無いとわかっていながらも、遠いところから叫ばずにはいられない。
海が車を家を畑を次々と食べて行く。どこまでも侵蝕してゆく。
「頼む、助かってくれ、止まってくれ」祈りの思いもむなしい。
あのときの驚愕と無力感は一生忘れない。
私でさえそうなのだから現場の罹災者の思いは幾許か。
命を落とされた方々に顔向けできないようなことはもうやめようじゃないか。
今は残った人を一刻も早く助けよう。
すべてがあまりにも遅すぎる。