残響 (改訂、再掲)
自動車のクラクション。
クラクションの音は実は一台一台微妙に違う。
最近のドライバーはマナーがいいのか普段はめったに鳴らさなくなった。
私も運転するが、最後に鳴らしたのは何時だったろうと記憶を手繰っても思い出せないほどだ。
けれど、そのクラクションが耳から離れない。
大津波に襲われた時、映像が繰り返し放送された。
まるで悲鳴のようだ。
何台も何十台も途切れることなく鳴らし続けている。
引き波のときは、浮いて海に流される車が悲痛に泣いているようだった。
テレビを見ているだけの私には何もしてあげられない。
ただ、無事を祈るばかり。
もうあんなに悲しいクラクションは二度と聞きたくないと思った。
大きな災害をもたらした台風12号の時も。
溢水に流される車。
同じように叫んでいる。助けてくれと。
長く長く響くクラクション。
天の非情さを呪う。
我々はもう十分すぎる試練を受けた。
もうこれ以上必要はない。
被災された皆様の傷が一日も早く癒えることを願って止みません。